本記事は、デジクル株式会社 代表取締役を務める今井悠介が、小売業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)について業界のキーパーソンと語り合う対談連載企画です。
第一回は、LINEヤフー株式会社でLINEミニアプリ事業を担当する武藤ウォーレン道夫さんにお越しいただき、小売業界におけるLINEミニアプリの役割や効果、同社が展開するパートナープログラムについてお話を伺いました。


ダウンロードや会員登録は不要、簡単にはじめられるLINEミニアプリの3つの特徴

ーLINE公式アカウントと共に、導入数を伸ばしているLINEミニアプリとはどのようなものなのでしょうか?

LINE ヤフー武藤
LINEミニアプリは、2020年に提供開始した「LINE」上で自社サービスを展開できるウェブアプリケーションのプラットフォームです。会員証や予約受付・順番待ち、商品の注文など店舗や施設運営に役立つさまざまな機能を提供しています。

LINEミニアプリの特徴は大きく分けて3つあります。
一つは、「LINE」を既に利用されている方であれば新たにアプリをダウンロードする必要がなく簡単にサービスを利用できる点です。ダウンロードや会員登録が不要で使い始められるというのは利用者にとって便利なのはもちろん、企業にとっても店舗スタッフの負荷が軽減されたというお声をいただいています。

例えば、会員登録をしてもらいたいとなった時に、ネイティブアプリやWEBサービスですとダウンロードや会員情報入力など登録に時間がかかってしまうのが、「LINE」だとすぐに使い始めることができるんです。パルグループ様が運営する「3COINS」では、LINEミニアプリを導入したことによって、ネイティブアプリだけでは獲得できていなかった層にまでリーチを広げることができ、会員登録を2倍に増やすことに成功しました。来客数も多い店舗なので、簡単に案内・登録ができるLINEミニアプリは、お客さまにとっても店舗スタッフにとっても非常に負担が少ないとご好評いただいてます。

二つめは、専用の通知機能で順番の呼び出しや予約リマインドを無料送信できる点です。例えば、「順番待ち」機能は、順番が近づいた時に通知が届くようになっているのですが、普段使いされている「LINE」だと通知にも気づきやすいようで、特に飲食店さんにご利用いただいている機能ですね。またこれらのサービスに伴う通知は無料となっている点も継続しやすいポイントになっていると思います。

三つめは、利用者とのデジタル接点が作れる点です。LINEミニアプリは、LINE公式アカウントと連携することでスムーズに友だちが増やせるようになっていて、利用者のデータに基づいたコミュニケーションを継続的に取れるというのは大きな特徴かと思います。

デジクル 今井
デジクルでも、LINEミニアプリが立ち上がったタイミングから、ソリューションの一つとして、主に小売企業を中心にLINEミニアプリを使ったサービスを提供しています。
その中で、感じているLINEミニアプリの良さとしては、デジタル化するにあたって障壁となるお金、従業員や店舗の負荷などのハードルを簡単に超えてくれる点ですね。「LINE」上でネイティブアプリと同じような体験がユーザーに提供できるのと、開発・カスタマイズ・保守にかかる費用もネイティブアプリと比較して低かったりするのでコストメリットを感じられている企業も多いです。
また、スーパー等で恵方巻きなどの事前予約を行う場合、アナログ運用だと、お客様に個人情報を記入してもらって管理しているかと思うのですが、これって実はリスクにもなりかねないんですよね。その点LINEミニアプリだと最低限の情報とLINEのユーザー IDで管理できるので情報の取り扱いの側面でもメリットがあるなと感じています。

LINE ヤフー武藤
そうですね、必要以上の個人情報をお預かりすることはリスクとも考えられるというようなことは僕も聴くことが増えましたね。


会員登録率がLINEミニアプリ導入前後で3倍に成長、ネイティブアプリを終了する企業も

LINE ヤフー武藤
中川政七商店さんでは、2022年6月からLINEミニアプリのデジタル会員証機能をご利用いただいているのですが、店舗購入した非会員ユーザーの会員登録率がLINEミニアプリ導入前後で3倍に、またLINE経由のECサイトでの売り上げも3倍になるなど効果も感じていただいております。(2022年11月時点)

中川政七商店さんは、お客様に店舗やブランドを好きになってもらうことをすごく大切にしていて、接客をはじめ、理念に基づいたブランド体験を提供されてるんです。購入履歴なども確認できるデジタル会員証をLINEミニアプリで展開することによって、お客様からも「会員登録がすごく簡単になった」「デジタル会員証を提示しやすくなったな」などお褒めのお言葉をいただいていると教えていただきました。中川政七商店さんでは、LINEミニアプリとLINE公式アカウントを連携いただいているのですが、LINEミニアプリ導入後はLINE公式アカウントのブロック率が大幅に下がったんです。店頭からLINEミニアプリで会員証を発行し、友だちになったお客様はすごくロイヤリティが高いのだと思います。

また、食品スーパーの東急ストアさんや阪急オアシスさんでは、LINEミニアプリを導入いただいたことで、これまで獲得が難しかった若年層の利用も増えたと聞いています。一方、年配の方にはご利用いただけないのかというと全くそんなことはなくて。コミュニケーションツールとして老若男女が普段から使っているからこそ、シニア層、若年層ともにアプローチ出来る点ではLINEの強みが現れていると感じています。この二つの企業様では、LINEミニアプリ導入時点ではネイティブアプリも運用されていましたが、現在ではネイティブアプリを終了し、LINEミニアプリやLINE公式アカウントを軸にしたCRMに取り組まれています。

デジクル 今井
若年層、ヤングファミリー層を会員化していきたいが中々むずかしいというのは、私たちも小売側の課題としてよく聞く点です。年配の方々も「LINE」だったら会員登録するよ、だったりハードルが下がるところは確かにありますよね。

デジクルでは、スーパーセンターなどを運営するニシムタさんに「商品予約」機能を搭載したLINEミニアプリを提供させていただいておりますが、土用の丑の日にご活用いただいた際には別のWEBツールで運用した前年と比較して、オンラインでの予約金額が前年比734%になりました。ニシムタさんの担当者からも「『LINE』というツールゆえの敷居の低さからお客様の間でも広がりやすく、LINE公式アカウントを友だち追加していただくことによって次に繋がる接点を増やすことができます」といった声を頂いており、導入の効果を感じていただいています。

 
デジクル社も認定を受けているLINEヤフーパートナープログラムとは

ーデジクルも認定いただきました、LINEヤフーパートナープログラムとはどのようなものなのでしょうか?


LINEヤフー社提供資料より抜粋

LINE ヤフー武藤
LINEヤフーパートナープログラムには、セールスパートナー、テクノロジーパートナー、ネットワークパートナー、CXパートナーという4つのカテゴリーがあり、高い実績と効果を示した企業様をパートナーとして認定しています。

デジクル 今井
デジクルは、2022年にLINEミニアプリ・LINEテクノロジーパートナーの個別開発部門に、昨年12月には、「デジクル商品予約」が同部門のLINEミニアプリパッケージに認定いただきました。

LINE ヤフー武藤
現在LINEミニアプリ部門では27のパートナー(2023年12月時点)さんがいらっしゃいますが、リテール領域に特化している企業の中で個別開発部門・パッケージ部門両方に認定させていただいたのはデジクルさんが初めてなんですよ。

デジクル 今井
それは初めて知りました。ありがとうございます。

ー「高い実績と効果」を示す企業をパートナー認定しているとありますが、具体的にはどんなところをみているのでしょうか?

LINE ヤフー武藤
詳細は公表していないのですが、LINEミニアプリ部門では実績や売上への貢献といった数字面はもちろん、ユーザー体験がスムーズか、サービス提供環境は十分か、その他サポート体制など様々な観点から評価しています。

デジクル 今井
実際にパートナー認定を受けたことによって、LINEヤフー社からは営業支援や個別相談に乗っていただいたりと、距離感がさらに近くなりました。また、企業様への提案段階でも、「この会社はちゃんとした会社なんだな」といったある種の信頼感を持って私たちの話にきちんと耳を傾けていただけているのはありがたいですね。

LINE ヤフー武藤
LINEヤフーだけでは、世の中に存在する多様な課題を解決することはできません。デジクルさんをはじめとするパートナーの皆様と一緒に、企業課題の解決にますます取り組んでいけたらなと思いますね。


LINEヤフーから見たデジクルの現在と今後の期待

ーデジクルやデジクル商品予約について、LINEヤフー社から見た印象や特徴についてお聞かせいただけますでしょうか。

LINE ヤフー武藤
まず言えることは、非常に幅広い実績をお持ちだということです。食品スーパーやドラッグストア、ホームセンターなど、現在注力されているリテール領域における販促関連の実績はもちろんですが、他業種での実績もお持ちですよね。幅広い業種に携わっているからこその気付きなどを活かしてより良い支援を行われているなと感じています。

二つめに、個別開発・パッケージ商品をどちらも展開されている点です。これによりお客様の幅広いニーズに寄り添ったソリューション提供ができると思いますし、お客様側からしても相談しやすさがあるんじゃないかなと。

三つめに、顧客・業界に対する理解の深さです。デジクルさんのメンバーは、全国を飛び回りお客様の声を直接聞きにいかれていたりして、今井さんにご連絡すると「今北海道にいます」なんてこともあったり(笑)。全国各地でお客様の生の声を拾い、状況を深く理解した上でサービスを提供している姿勢は素晴らしいと思います。デジタルやシステム面だけでなく、お客様の業務や状況も的確に把握している印象があります。
 
デジクル 今井
小売の本社や店舗に訪問して自分たちの足で情報を取りに行くということはチーム全体で非常に大事にしているポイントです。デジクルが提供しているソリューションに関わる部分だけでなく、業界全体の構造や現状をしっかりと理解した上で一社一社のお客様と向き合ってますし、社内でも現場で学んだことや得た情報は積極的に共有するようにしています。

ー今後認定パートナーとしてデジクルに期待していることはありますか?

LINE ヤフー武藤
一番は、デジクルさんが、LINEミニアプリを活用した便利なソリューションをより多くの企業に展開し、事業を拡大していただくことを期待しています。

また、その過程でLINEミニアプリの機能やプラットフォームを最大限に活用いただけると嬉しいです。
LINEミニアプリはサービスメッセージなど、多彩な機能を搭載していて、その使い方についても多岐に渡ります。お使いいただく中で例えば新しいテンプレートを一緒に考えていくなどもできたらこちらとしては嬉しいですね。

また、LINEミニアプリでサービスを提供するだけでなく、サービス提供することによって得たデータ等を活用したマーケティング活用への支援にも期待しています。ユーザーデータを活用し、LINE公式アカウントで特定の属性に向けたセグメント配信なども行えます。これはほんの一例ですが、こうした機能を活かして、利用者の許諾のもとでLINEヤフー社のユーザーデータを有効活用していただき、より効果的なユーザー体験を提供していただけると嬉しいですね。
※LINEアカウントと紐づいた行動データの取得・活用にはユーザーの許諾が必須となります。

デジクル 今井
まだ詳しいことはお話できませんが今も準備を進めているものもあるので楽しみにしていてください(笑)

LINEヤフー社の資産を活かしてLINEミニアプリ事業を次のステージへ

ー最後に、今後のLINEミニアプリ事業の方針や展望をお聞かせいただけますか?

LINE ヤフー武藤
これまで、LINEミニアプリは店舗や飲食店など、オフラインからお使いいただく点に注力して、広げてきたのですが、今後はそれをさらに、オフラインからオンラインサービスもしくはオンラインで完結するような、サービスとして拡大していきたいと考えています。

デジクル 今井
店頭で獲得した顧客接点をつかってECに繋げるのもひとつですよね。

LINE ヤフー武藤
おっしゃる通りです。
LINE公式アカウントと連携してトーク画面からLINEミニアプリのサービスにアクセスしたり、さらにそこからECに繋げたりと、弊社が展開する様々なオンライン・オフラインのサービスと連携し各サービスを繋げていくことでユーザーのあらゆる課題を解決していくことができるんじゃないかなと思っています。チャレンジングではありますが、LINEミニアプリ事業を次のステージに進められるよう頑張ります。

デジクル 今井
私たちは、小売業態に特化してサービスを展開し、主に小売業のクーポン・キャンペーン施策などのデジタル販促やデジタル会員証の構築・活用を支援しています。その中で重要な顧客接点となり得るLINEミニアプリを活用して今後もソリューションの幅を増やしていきたいですし、活用を深めていきたいです。
また、顧客が既に運用されている自社アプリや他のデジタルサービスもうまく連携しながらトータルでのデジタル化を支援してまいります。


※本記事は2024年1月時点の情報となります。