本記事は、株式会社デジクルで代表取締役を務める今井悠介が、小売業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)について業界のキーパーソンと語り合う対談連載企画です。

第2回は、株式会社ひらせいホームセンター 代表取締役の清水 泰成さんと、株式会社バリューデザイン 代表取締役社長 林秀治さんにお越しいただき、ひらせい様のデジタル販促に関するお取り組みおよびアプリ・プリペイドカード会員拡大についてお話を伺いました。


自社のポイント・プリペイドマネーを活用した戦略やアプリの展開でお客さまとのコミュニケーションを促進

ー 株式会社ひらせいホームセンターの事業内容についてお聞かせいただけますか。

ひらせい 清水:

ホームセンター事業のひらせいホームセンターを中心に新潟県内外で144店舗を展開しています。ホームセンター業態から始まりましたが、食料品の取り扱いも徐々に拡充し、現在は100円ショップのダイソーやレンタル、本を取り扱うTSUTAYAもフランチャイズ展開しています。

最近では、ひらせいファームという農業法人を設立し、ホームセンターのプラットフォームを活用して農産物も販売しています。これは農家の収益基盤の安定を支援するためにはじめた事業で、もち麦の活用やウイスキーの製造にも進出し、多岐にわたるビジネス展開をしています。弊社から出資もして一緒に開発販売するウイスキーはなんと世界一*にもなったんですよ。
*: 『新潟亀田ニューポットピーテッド/株式会社新潟小規模蒸溜所』がワールドベスト・ニューメイク&ヤングスピリッツに輝いた


ー幅広い取り組みを展開されてらっしゃるんですね。

ひらせい 清水:
そうですね。弊社の基本的な経営戦略は、「5歳から80歳までの幅広い世代に、気軽に買い物を楽しんでもらえる場所を提供すること」です。創業者で現在の会長である私の父親が掲げたこの方針は差別化戦略としても位置づけています。この戦略のもと、様々な事業を展開し、新潟における競合ホームセンターとの差別化を図っています。

最近では売上構成が変わりホームセンターの一部のカテゴリが縮小している中で、ダイソーや農業用品の売上比率が増加していたりと地域やお客様のニーズに合わせて売り場を変更することを大切にしています。


ーデジタル関連の取り組みとしてはどのようなことに取り組まれてるのでしょうか?

ひらせい 清水:
お客さまの利便性を高めお得な情報を提供するための手段として、5年前からバリューデザインさんにご協力いただき自社のプリペイドマネー「くまっと」を活用したポイント戦略を展開しています。 プリペイド機能は、自社アプリからお使いいただけるようにしていて、その他にもアプリを通じてお得な情報や便利な体験をご提供できるよう取り組みを強化しているところです。

昨年からは、ひらせいアプリに「デジクルプラス」を導入させていただき、デジタルキャンペーンの企画から運用まで簡単にできるようになりました。引き続き、ユーザーインターフェース、アプリの利便性向上に取り組んでいきます。

ナショナルチェーンさんと比較すると、デジタル化のスピードは劣る部分もありますが、自分たちの強みを活かしながら優先順位を決めて取り組みを進めています。



約12万店舗が活用する「独自Pay」サービスを展開するバリューデザイン

ー 株式会社バリューデザインの事業内容についてお聞かせいただけますか。

バリューデザイン 林:

バリューデザインでは、「独自Pay」と呼ばれるプリペイド式の電子マネーシステムを提供していて、日本ではひらせいホームセンターさんを含む累計約12万店舗にご利用いただいています。大きな特徴は、システムを提供するだけでなく、導入いただく企業様と一緒にサービスの開発を進めている点です。

例えばひらせいさんだと、「くまっと」の機能設計、利用を促進するキャンペーンや特典の企画など、色々なことを相談させていただいています。導入して終わりでなく、その後もずっとお客さまに満足し続けていただくために、トライアンドエラーを繰り返しながらお客さまにお喜びいただけるような仕組み作りに取り組んでいます。


ー約12万企業に導入されているとのことですが、どの業種が多いのでしょうか?

バリューデザイン 林
取扱高の8割を占めているのは、小売業で、ホームセンターやスーパーマーケット、ドラッグストアが特に多いです。残りは飲食チェーンが占めており、すかいらーくさんやモスバーガーさんにもご利用いただいております。

キャッシュレス化が進みクレジットカードやコード決済が増えたことで、店舗は決済手数料増加に悩まされています。とはいえ、キャッシュレス化をやめる判断も中々難しいのが現実です。そんな時に「どのようなキャッシュレス化を進めていくことが最もお店にとってメリットが大きいのか。その結果お客さまにも還元できるのか」と考えられて、「独自Pay」導入についてご相談いただくこともずいぶん増えました。


ーハウス電子マネーを導入するメリットはどのようなものがあるのでしょうか?

 バリューデザイン 林:
「独自Pay」は、導入企業がキャッシュレスサービスの主体者になります。店舗が発行する会員証を通してサービスを提供するため、お客さまとの接点が作れることもメリットですし、汎用決済サービスに比べて大きな会員特典の提供が可能となるため、会員のリピート促進に効果を発揮します。

汎用決済サービスでは、導入企業が決済サービス側に支払いが発生するのに対し、自社のポイントは自分たちの店舗で負担するものなので、導入企業にとっても提供できる特典の幅も広がり、利用しやすく、コストも抑えることができると言う点で導入を判断されています。

ひらせい 清水:
本当に小売業態がハウス電子マネーを導入するメリットは大きいと思います。

チャージしたお金は、将来自分たちのお店で使ってもらえる、いわば将来の買い物の約束みたいなものになるので、囲い込みのコストも含めれば、やらない理由が見つからないのではと思ってます。

バリューデザイン 林:
ありがとうございます。そう言っていただけて何よりです。

数年前からは、プラスチックカードではなく、アプリやLINEミニアプリから使えるデジタル会員証を発行する企業さまが増えています。ひらせいさんでも、アプリ上のデジタル会員証を通じて電子マネーをお使いいただくお客さまが多いです。



「デジクルプラス」導入によって、小売起点でのキャンペーン実施が可能に

ーひらせいホームセンターは2023年11月に「デジクルプラス」を導入されましたが、導入の背景についてもお聞かせいただけますか?

ひらせい 清水:
先ほどもお話した通り、ひらせいグループでは、自社電子マネーと自社アプリを積極的に活用しています。一方で、これまで販促キャンペーンは全てアナログでの展開だったので、キャンペーン手法も限定的で、基本的にはメーカーさんにご提案いただいたキャンペーンを出来る範囲で実施することが多かったんです。アナログですので、もちろんデータも蓄積しておらず頭を抱えていました。

そんなタイミングで、バリューデザインさんからデジクルさんをご紹介いただきました。

アプリでデジタル販促キャンペーンを展開したいと思いつつも費用面や運用面で断念していたので、お話を聞かせていただいた後、すぐに導入を決めました。

デジクル 今井:

初めてお会いした時から、清水さんは、「デジクルプラス」活用のイメージをすごく持ってくださっていたと記憶しています。目的が明確で。

ひらせい 清水:
アプリはあくまでもお客さんとのタッチポイントで、お客さまに魅力的なコンテンツや企画を届けることで、お客さまとの繋がりを広げ、深めることが目的です。「デジクルプラス」を活用すれば、色々なキャンペーンが打てて、お客さまがアプリをダウンロードするきっかけになったり、エンゲージメントが上がります。

打てる販促企画が限られていて受け身だったところから、自社主導の企画としてアプリやプリカ会員向けにキャンペーンが打てるようになっただけでなく、メーカー企業に対してもお客さま向けの販促キャンペーンの提案ができるようになりました。


ー導入後、お客さまや社内からの反応はございましたか?

ひらせい 清水:
「デジクルプラス」導入後、アプリ会員、プリカ会員ともに右肩上がりで増えていて、どちらも含めた「くまっと会員」は40万人を突破しました。

時代の流れとともに、店舗でお買い物をするだけでなく、ECや店頭受け取り注文など、お客さまの買い物のカタチは変化しています。だからこそ、お客さまとのデジタル接点は重要で、スマートフォンを介したコミュニケーションには積極的に取り組むべきだと考えています。その手段の一つとして、お客さまにお喜びいただけるデジタル販促キャンペーンをどんどんやっていきたいなと。また、より幅広いお客さまに広げていくために、LINE活用も検討していければと思っています。

デジクル 今井:
導入後も色々と連携させていただく中で、効果が数字にまで現れているのは嬉しいですね。

メーカーさまとのお取り組みだけでなく、最近ではプリペイドカードチャージを促進する機能活用も開始予定なので、ひらせいさんのデジタル販促の成功パターンを増やしていきたいです。

 バリューデザイン 林:
アプリを使ってもらうことで、お客さまにお得な情報を届けられ結果来店頻度の向上などに繋がるので、「デジクルプラス」によって魅力的な販促キャンペーンが打てるようになり、お客さまとのコミュニケーションチャンスが増えたことは私たちにとっても嬉しいことです。



今後期待していること

ーひらせいさんが、今後パートナーとして、バリューデザインやデジクルに期待していることがあれば教えていただけますか。

ひらせい 清水:
両社に期待していることとしては、弊社の成長に繋がるような提案をこれからもどんどんしてほしいですね。

バリューデザイン 林:
バリューデザインとしては、「独自Pay」にとどまらず、今後は、店舗内でのコミュニケーションチャネルとして、デジタルサイネージを活用していきたいなと考えています。

3月1日に、デジタルサイネージを長く手掛けているクラウドポイント社と経営統合しまして、企画から施行までワンストップで提供できる環境が整いましたので、これを活用して何ができるのか挑戦していきたいなと考えております。

デジクル 今井:
販促ソリューション「デジクルプラス」のアプリ搭載から開始したひらせいさんとのお取り組みですが、現在はお客さまとのつながる手段としてLINEプラットフォーム活用についてもひらせいさんとご相談しながらお話を進めさせていただいております。

私たちの役割としては、ひらせいさんがデジタルでお客さまとの繋がりを深め、「くまっと」への利用にも繋がるような体験をご提供できるように全力でサポートさせていただきます。